月がきれいを最終回まで見ました。
Twitterではさんざん言いましたけど、本当に最高の作品です。
ここ数年で僕が一番感情移入する事が出来た作品だと思います。
ネタバレ及び考察を含む内容となりますので、気になる方はご遠慮下さい。
1.月がきれいとはどんな作品か
「月がきれい」は中学三年生の男女が恋愛を通じ成長する一年間を綴った物語です。
主人公は主に二人、
一人は安曇小太郎、彼の趣味は小説を読むことで、将来は小説家を目指しています。
もう一人は水野茜、彼女は陸上に打ちこんでいて成績も良好、少し緊張しやすい女の子です。
両者共に性格は少し内気で、新しい友だちを作ったり、
家族でいる所を同級生に見られたりすると少し恥ずかしい、思春期真っ只中です。
彼女たちがどのように恋におちて、どのように気持ちを告白し、どのように成長するのか。
また、どのような価値観を持っているのか、どのような人間になりたいのか。
彼女たちの生涯を綴ったお話でもあります。
2.この作品の魅力
この作品にはたくさんの魅力があるのだが、ここでは敢えて3点だけ述べようと思います。
他にもたくさんの魅力があるのですが、あまり長々しく書いても説得力がなくなる気がするので…
- 登場人物の恋愛に関しての人間性
この作品を見て、彼女達の恋愛に対する姿勢に共感できる点が多く感じました。
主に、彼女たちの恋愛に関しての初心さです。
例えば、恋愛初期段階において、「直接話すよりLINE等の媒体を介しての方がコミュニュケーションを取りやすいと感じる」とか、「正直付き合うとかよくわかんない」とか。
僕が中学生だった時にも同じような事を感じていました。
手を繋ぐのにも緊張したし、ましてやキスがしたいなどと言えるわけもない、そのような自分の経験と重なる部分がとても初々しいと感じました。
初めて恋をして「付き合う」というのを経験して、男女の関係というものを初めて経験する。
いい意味での子供っぽさが色濃く描かれています。
あまり積極的ではない、悪く言えばうじうじとした恋愛が私は大好物なのです。
Cパートにて、同級生の恋愛観が茜たちより進んでいる(セックスを経験している)事を
演出する事によって、小太郎たちの恋愛がどれだけプラトニックなのか、
というのを強調するファクターになっているのもとても良かったと思います。
自分も中学生時代にこんな恋愛できたら最高だっただろうな、
と心から強く感じさせてくれる、そんな点がこの作品の一番の魅力だと思います。 - 声優による演技の細やかさ
この作品はプレスコにて制作されていているのですが、
それに伴って声優による細やかな感情表現がとても多く感じました。
細やかな吐息や声ではない声、間のもたせ方等がとても際立って良く感じました。
また、主役の二人に敢えて新人声優を起用する事によって、経験の少なさが逆に
初々しさを表現できているものとても効果的だったと思います。
この声優による演技がこの作品を引き立てる魅力になってると思います。 - 劇中歌が東山奈央による様々な楽曲のカバー
重要なシーンにおいて、
そのシーンに関連する名曲をバラード調にカバーして流しているのが特徴的でした。
そのシーンにぴったり合う楽曲をチョイスしていて、そのシーンの良さや楽曲に
より深く感情移入出来たと思います。
最近だと、君の名はや灰と幻想のグリムガル等、澤野弘之氏が音楽を担当していない作品でボーカルの入っている楽曲を劇伴として使用するケースが増えています。
生声が入る事により、より強い心理描写やそのシーンの重要さを印象付ける等効果的な
表現が出来ると私は思います。
昨今では、直接的に表現する作品が好まれる傾向にあるので、その点においてもとても効果的なのだと感じました。
名曲によって深く感情移入出来る、
この点もこの作品の一つの魅力なのではないでしょうか?
3.月がきれいというタイトルと彼の小説のタイトルについて
「月がきれい」というこの作品のタイトルはおそらく
夏目漱石の「I Love You」をどう訳すかというエピソードから来ているのだと思います。
夏目漱石が英語の教師をしていた時に、「I Love You」を「我君を愛す」と翻訳した生徒に対し、
「日本人はそんなことは言わない。月が綺麗ですねとでも訳しておけ」と言ったという話です。
正しい文献があるわけではないですが、とても有名で、ロマンチックな話ですよね。
「月がきれい」という単語を聞いてこの話を思い浮かべた方は多いのではないでしょうか?
そして、小太郎は自分の経験した初恋を「13.70」というタイトルで作品にしました。
「13.70」は茜の陸上の自己ベストタイムで彼女の誇りでもある数字です。
小太郎がもしも「I Love You」を翻訳するのならば、「13.70」となるのではないだろうかという意味も込められているのではないでしょうか?
4.サブタイトルについて
月がきれいのサブタイトルには様々な文学作品のタイトルが使用されています。
題字は水色は小太郎、ピンクは茜と分けています。
その元ネタとなっている作品とその話数に関連性を持たせているのも面白いと思いました。
文学作品が好きな方はサブタイトルを見てやきもきとしたのではないでしょうか?
また、こんな展開になると思うから、こんなタイトルが使われるんじゃないかな?などと
考えられたのもとても楽しめました。
少なくとも僕はそうです。
と、言ってもそこまで多くの文学作品を読んだ事は無いので、知らない作品もありましたが、
逆に、「このタイトルどこかで聞いたことあるな」とか「読んでみようかな」と思わせてくれるいいきっかけになっていると思います。
おそらくこのような意図はないと思うのですが、
「ライトノベルばかりじゃなく、文学作品も読んでみたらどうだ?」
というメタファーにも感じられて面白いですね。
この作品をみて文学作品と呼ばれるものを少し読んでみようかな、と思った方、
川端康成の眠れる美女をおすすめしますよ。
中編集ですので読み応えもありつつ、あまり長くないので読みやすいですよ。
谷崎潤一郎が好きなので、春琴抄をおすすめしたい、というのが本心ですが…
5.全体的な感想
彼は最後、LINEを使わず声を使って彼女への気持ちを叫びました。
彼の叫びが彼女に届いたかどうかは定かではありませんが、
彼の気持ちは確かに彼女の元へと届いたと思います。
自分の好きな人が自分を好きになってくれる、
人と人との気持ちが通じあい一つになるのは奇跡なのです。
この作品を見て感じた彼女たち恋愛観、
それが僕の恋愛に対する理想と重なるのです。
この作品を僕はとても好きです。
だからこそ、僕は友達等にはあまり気軽に勧められないと思いました。
僕の場合は、ですし、中の深い人にならオススメできます。
何故ならばこの作品の良さは
登場人物達の恋愛観や理想像に同意出来る、共感できる、
要は登場人物に深く感情移入が出来るという点にあるからです。
彼らの選択した一つひとつの答え、それに同じように気持が動くかどうか。
恋愛とは、人生においてとても重要なイベントの一つだと思います。
人間とは恋愛をするために生きているのだ、とまで言う人も居るほどです。
恋愛とは自分という人間を形成している一つの要素なのです。
もしもこの作品を友達に勧めたとして、この作品を否定されてしまったら、
自分の価値観を、自分という人間を否定される事でもあるのだと考えてしまいます。
さらに、どこが面白いのかと問われたとして、こんな恋愛がしたいと思わせてくれる所なんて答えるのも正直こっ恥ずかしいと感じてしまうからです。
とても飛躍した話に聞こえてしまうかもしれませんが、
僕にとって恋愛とはそのような次元の話であるのです。
だって恋愛って、自己を形成するひとつで、一度しか無い人生の一握りで、
これからの彼女という人間を、自分という人間の行く末を左右するかもしれないビッグイベントなんです。
常にこんな事を考え恋愛をしているというわけではありませんが、
根底にはきっとこんな考えが僕にはあります。
なので、この作品を好きな人とはきっと
普通とは違った意味で仲良くなれるんだろうな、と思います。
たぶん、この作品を好きになれる人は、「正直、友達にも恋愛相談出来ない」とか
「性行為を神聖視してる」人が多いのではないでしょうか?
僕はそうです。
「どんどん彼氏を変える誰とでも付き合っちゃう女性」とか「彼女との性行為を誰にでも話せる人」とかを正直、僕はあまり得意では無いです。
得意では無いだけで人間として嫌いではないですよ。
ですが、この作品は、プラトニックな恋愛観に同意出来ない人には楽しめない作品でもあると思う、ということです。
(500)日のサマーとかノッティングヒルの恋人、ただ君を愛してるとかそんな映画が好きな人、
絶対この作品好きだと思います。
プラトニックラブな恋愛観をお持ちの方、キュンキュンしたい方、
是非ともおすすめです。
僕が見たアニメで、ここ数年で本当に良い作品だと思いました。
この記事を見て少しでも見てみようかなと思ってもらえたら幸いです。
正直な所、もっともっとこの作品は最高だという事を主張したいのですが、
あまり上手くまとまらなかったので、強引に締めてしまって申し訳ありません。
今回も僕のブログを最後まで見ていただきありがとうございました。
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